「ちょっと、そこの人!」


「グレーのコートに黒のマフラー巻いてるお姉さん!」


えっ…私?


振り向くと


高校生くらいの男の子


「……」


「これ、落としたんちゃう?」


えっ?


男の子の手には、ハンカチ…って


これ古典的なナンパ?


「ほら」


渡されたハンカチは

私のだ!


慌ててバッグを見ると、ショルダーのところに結んでたスカーフが、ない。


「あ、ありがとう」

「お姉さん、俺のことナンパや思うたやろ」


ニヤッと笑い言う。

「えっ、えーと」


「顔に書いてあるで」


「ごめんなさい」


慌てて頭を下げる。

「かまへんって…俺も『ハンカチ落としたで』って言いながら、なんや古いナンパみたいって思ったさかい」


人懐っこい笑顔で言ってくれる。


なんや、いい子やな。


「ありがとう。じゃあね」



「お姉さん、急いでるん?」


「えっ、別に」


「ほな、お礼に缶ジュース一本奢ってくれへん?俺、喉渇いたし」


缶ジュース?


「うん、いいよ。缶ジュース言わんと、あそこのバーガーショップに行こ。ハンバーガーくらいご馳走するわ」


「ほんと!サンキュー」