よく晴れた、秋の日。




「うーんっ!

やっぱこっちは空気が上手いなぁ!」


「直之…、お前よく母さんの

運転に堪えられたな…尊敬するわ」


「何よぉ、まるでお母さんの運転が

下手くそみたいじゃないの!」


「その通りだろ」


「ひどい!お母さんショック!」




久しぶりに、ばぁちゃんの家に

やって来た亮佑、直之、菜々子は

着いて早々コントのような

やり取りを始めた。

いや、着いて早々…ではなく

車中からずっとこんな感じだったのだが。




壱逗 亮佑は、1ヶ月ほど前

この田舎で約1ヶ月生活していた。

あの時は蝉の大合唱と真っ青な空、

そしてぽっかりと浮かぶ入道雲が

亮佑を出迎えたが、10月にもなると

ススキの穂が風に揺れていた。




「いらっしゃい」


外の声が騒がし過ぎて、

チャイムを鳴らす前に家の中から

腰の曲がったばぁちゃんが出て来た。

亮佑の母、菜々子の実母である。

さらにばぁちゃんの後から、

腰まで伸ばした髪を大きく揺らしながら

美少女が飛び出して来た。

菜々子の妹、菜々実が預かっていた、

菜々実の元旦那の子供である。

血の繋がりはないものの、

その絆は親子以上のものがあった。

それは菜々実が亡くなった後も

ばぁちゃんによって続いている。




「早苗ちゃーん!久しぶりねぇ!

前回会えなかったものね。

ぁあ、もう超可愛い!」


「"超"とかやめろよ、

おばさんの口から出てくると

違和感ありまくり」


「ひどい、亮ちゃん!」


「亮佑、あんた女の敵ね。

おばさんは失礼よ。

そういうあんたはトマト

食べれるようになったの?」




早苗は亮佑を睨みつけて、

菜々子と抱き着き合う。




「ぁーあ、せっかくの再会が台なしだねぇ」




後ろでボソッと、直之が呟いた。

亮佑は誰にもばれないように、

直之の足を踏んだ。