(一)


溝出が動かないわけは祟りであり、祟ったのは野槌という元神様。


そこまでの情報を得られたならば、あとはその祟った元凶を斬れば良いというが冬月の見解だ。


少々、強引すぎるが、一番手っ取り早いことだし、溝出にはもう余命がない。


藤馬は二日と言った。そうして、あれから半日以上は経つ。


半日以上の間、冬月たちは何もしなかったと言えばそうだが、移動時間となれば致し方あるまい。


腐っても鯛、妖怪に格下げされた神様だろうとも侮るなかれときちんと睡眠を取り、午前中には家を出た。


そこから公共交通機関を乗り継いで、やっとたどり着いた土地はとある奥山。


春先に追い付こう季節、山の緑はまばら。禿げ山とはいかないものの、ずいぶんと寂しく廃れた場所だと思えた。