「……桔梗」
そう呼ばれた彼女は、漆黒の、見え方にもよっては紫に見えぬことはなき髪の毛を翻して声のもとへ目を向ける。
桔梗「ほぅ……これはこれは、懐かしき顔」
暗い森の中、くのいちで城に仕えている桔梗と、敵国の城に仕える慎司は望まぬ再会をしていた。
慎司「まさか、出会うとはな」
桔梗「…おや?まだ甘えが抜けないあたり、おぬしもまだまだ子供だなあ」
挑発するように笑う。昔なら突っかかっていたその笑みも、今は愛しさやせつなさがぐちゃぐちゃにこみあげていてもう何がしたいのかわからなかった。
桔梗「…フッ、動揺を隠せぬとは、まだまだ未熟だな」
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