保健室の先生は大慌てで高橋の治療をした
それから、落ち着いた高橋は

「さっきは、ごめんなさい」

と温かいココアを飲みながら言う

「・・・別に」

〝ごめんなさい〟か


[ どうしてあんたなんか産まれてきたのよ! ]


懐かしいな


「見ましたよね」

「何を」

彼女はフッと困ったように微笑んで

「私の、足」

と言った



見た、と言うべきだろうか
見なかった、と言うべきだろうか


「正直に言ってくださって良いんですよ
さっき、私の足にジャージかけてくれたし・・・」

切なげに笑う高橋

「私の足見てどう思いましたか?
気持ち悪かったですか?、変だと思いましたか?」

「たかは・・・」

「私は一年前までモデルをやっていたんです
意外でしょ?
でも、ある日。
トラックのひき逃げにあってから、私の足は動かなくなってしまった」

ココアを握る手が震えていた

「動かなくなった足は医者に〝腐りかけている〟と言われたんです
切断しなきゃ、命が危ないって」

微笑みが消えて
涙に変わっていた

「仕方ないことだって、分かってるんです
一流のモデルになる夢も全部焼き捨てて、踏み潰して。
足なんて、命より軽いものですよね?」

また、フッと笑う


もういい
もういいから


「さっきは油断してました
集団見たら腰抜けて、動けなかったところを・・・」

足をなでで
またなんでもないような笑みを浮かべた