「小野原和祇を頼む。」



ドアの隙間から顔を覗かせた

のは以前見た・・

イイガタイのスーツ男、

正木克哉、和祇の元・夫だ。


此処を嗅ぎつけるなんて。

探偵でも雇って

調べさせたのだろうか、

彼の顔を見ても驚きもしない。


恐らく彼女の所在を調べて

こちらに辿り着いたのだろう。


これが彼女1人の、

彼女の部屋だったりしたら・・


神足の不安は大袈裟では

なかったと云う事だ。


よくも堂々と来れたものである。

チェーンを外しドアの前に立つ。

恥ずかしい位の執念深さを持つ

男を彼は鋭く見据えた。



「ご用件は?」



神足もそこは負けてはいない。

背丈はほぼ同じである。



「君に関係あるのか?」

「恋人だからね。」


「ほう。で?

出すのか出さないのか。」



何様? 何処まで俺サマなんだ。

なるほど、呆れる位

強引かつ高慢な男である。



「本人次第だ」



神足は一旦中へ入ると

インターホン越しに会話を

聞いていたらしい和祇の元へ。

何か

苛立った様に爪を噛んでいた。



「・・・なんやろ。」

「さあ」

「兎に角・・外で話すわ。

上がり込まれるのは嫌やし。」



携帯をポケットに和祇が靴を履く。