「瑠風さん・・・。

 俺・・・、大人が大嫌いなんですよ。

 大人って嘘つきで汚れてるし、平気で裏切るでしょ?

 出来れば、俺は20歳になる前に死にたいっすね。

 別に生きてる意味なんてあんまりないし・・・。」

 レイはそう言うとクラウディオの頭を撫でる。

「瑠風さん・・・。

 俺・・・、友達っていないんですよ。

 友達なんかいらないんです。

 無意味だから・・・。」

 私達は、いつもの縁側で2人並んで空を見てた。

「俺・・・、実は今度もう1回、転入試験受けるんすよ。

 母さんがどうしても高校だけは出とけって煩いんで。

 でも、俺的には高校なんかどーでもいいんでテストは白紙で出してくるつもりなんすよね・・・。」

「ニャーー。」

 クラウディオがあくびした。

 私は隣のレイの手を握った。

 レイも私の手を握り返した。

「なんか気持ちいいよね?

 最近、雨とか全然降らないよね・・・。」

「そうっすね・・・。」

「ニャーーン。」

 クラウディオがまたあくびした。

「今日は土曜日ですよね?」

「そうだよ、土曜日。

 あっ!

 そうだ!

 忘れてた・・・。」

 私はすっかり忘れてた。

 今日は夫がくる日だった。

 私はレイの手を握りながら、

「今日、夫がうちに来るのよ・・・。

 夜に・・・。

 今夜泊まってくみたいなんだ・・・。」

 一瞬、握った手が静止する。

「えっ?

 そうなんすか?」

 レイは複雑な顔で私を見つめる。

「うん。

 私も驚いちゃってるの。

 全然連絡もくれないし音沙汰無しだったのにいきなり来るなんて言うから・・・。

 別に会いたくないんだけどね・・・。」

 風がざわめく・・・。

 空は澄みきった色をしてた。

「俺、変な事言っちゃいますけど、なんか凄く嫌です。

 瑠風さんに夫さん?

 がいるのわかってるけど、やっぱ凄く嫌です。

 あの・・・、俺のわがままですけど、お願いがあるんす。

 夫さんて人と、

 あの・・・、

 あの・・・。」

 レイは言葉につまってしまった。

 私はレイが私に言わんとする事がなんとなくわかった。