.+*想い遥か*+.







「と、いうことで姫、あとはよろしくな」

――玄関の前、時刻は朝の7時30分。


大きなキャリーバックを両脇に置き、ニカっと笑う体格のいい背の高い彼はわたくしの父、神楽 直人(かぐら なおと)。


「お願いね」

そう言ってわたくしの両肩をポンとたたいた温厚そうな穏やかな雰囲気の美人女性はわたくしの母、弥生(やよい)。


「ちょと、どういうことですの?」

そんなふたりに待ったをかけるのは、ふたりの一人娘であるわたくし、姫(ひめ)。


「あら?

言ってなかったかしら?


今日から仕事の都合でパパは海外に行くのよ。


それで、わたしも一緒に行くことにしたの。


だからお留守番お願いね」


――――――え?

訊いてませんわ、そんなこと!!


わたくしはブンブン頭を振ってふたりを睨みます。



「そっか~、言ってなかったか~。

スマンな姫。

あとは頼む」



「お待ちになって!!

まだ高校1年生の愛娘ひとりを残して海外に行くって、どういうことですの?」


自分勝手に話を進めていくふたりに、もはやわたくしの怒りはピークですわ。


それなのに、わたくしの両親はそんなこと知ったことかと気楽に話していくのです。


「いいじゃないか。


これでお前は恋をまっとうできるんだ。


感謝こそすれ、憎まれる覚えはないぞ?」


「それは……どういうことですの?」


眉根を寄せて質問すれば、今度は母から言葉が返ってきた。