「フクテン。
あたし、やっぱり帰りたい。」

(どうして知らない人の結婚式に
しかも苦手な人の婚約者役で
出なけゃならないの…。)

気分が悪くなるほどに
緊張がピークに達して、
ソワソワしている舞花(まいか)に
フクテンと呼ばれた男が
右手の人差し指を立て、
左手で舞花の口を抑えた。

「佐田(さだ)、静かにしろ。
親と弟にバレるだろ。

お前は今日一日、
俺の婚約者の契約だろ。

朝陽(あさひ)さんだ。
朝陽さん!!名前で呼べ。」

横暴な態度の暴君にどうして
逆らえなかったのだろうかと

舞花は今、この場にいる自分自身を呪った。