黒い蝶。


優美に花から花へと
渡る。


美しき蝶。


だけれど。


それゆえに
何一つ寄り付かない。



儚い蝶。





「私はそうなのか」


私、菅野崎ららは
机に突っ伏して
溜め息を吐いた。




「もうイヤ」


頬に染みる
死んだ木の空しい温かさ。


ぬめぬめする
絵の具の粘着力。



「もうここには私の居場所はない」


放課後の夕日に染まる教室。



その片隅にある
私の机には
『消えろ』と
ピンクの絵の具ので書かれていた。