俺は今日も変わらず客をさばくための仕込みに追われる…。
あの女の騒ぎで評判を落とした客も数を持ち直し、アキラがいた頃は本当に良かったと、スープの面倒を見ながら、製麺機で麺を圧延して太めの切刃で出来上がった一食、一食分を木箱に詰めていく…。

「ケイジさん…すいませんでした…。」
なんてタイミングの悪さだ…俺をそう呼ぶのはアキラ、あいつしかいない。
後ろには小動物のように震えて見せるヒロミ。いけしゃあしゃあと!

一旦火を落とし、製麺機の電源も切って、カウンターごしの二人のもとへと向かう。
「腕、出せよ。」
アキラの袖を強引にまくると、注射痕はなかったが、ヒロミのか細い腕には、まだ治り切っていない黒点が有った…。