もうずっと使っていなかった鍵を回して家のドアを開ける。



リビングの横を通って2階の部屋へ行こうとすると、お父さんが声を上げる。




「日向!どこへ行っていたんだ!あんな手紙だけ残して」




あんな手紙……。



あぁ、出て行く時に書いた“探さないでください”って手紙か……。




「何が不満だったんだ!?」



お父さんが声を荒らげると、まだよちよち歩きの弟が泣きだした。



お母さんが慌てて弟を抱きあげてあやし、お父さんも心配そうに振り返った。



「それが嫌。太一ばっかりかまって、私の方なんか見てくれないじゃない」




今までだったら言えなかった。



だけど、私はちゃんと知った。



自分の気持ちをちゃんと言わないとダメだって事を。