「こんばんはー。今日も疲れた……」
 
午後九時。僕は布団にくるまりながら彼女にメールを送る。それがいつのまにか僕の生活に定着した習慣。
いつもいつもいつも、毎日午後九時になると僕は他愛のない、面白みの欠片もない文章を電波にのせて彼女に送った。
習慣になった時点で楽しみなど、ない。
 
十四歳にして初めてできた彼女は学年の中でもちょっと人気の女の子だったりして、始めは調子に乗ったりもした。学校で彼女と話していると必ず友人が僕達二人をからかう。
それが僕には恥ずかしくて、それ以上に誇らしくもあった。
 
いつからだろう?そのからかいがとても不快で、彼女との会話の間に時折生まれる薄く濁った層に苦痛を覚えだしたのは。
 
そんなことを考えてる時点で僕は彼女とは終わるべきなのだろう。しかし幼い僕にはその方法も、そうする意味もわからなかった。その先に何があるというのか?
 
流されていく。僕の心が、じゅくじゅくと少しずつ腐っていく。
 
ぶーぶーぶー
 
律儀に三回なるバイブ。
彼女専用メール着信の低い振動音で、僕は自分がいつの間にか目を閉じていたことに気付いた。本気で疲れてる。
 
『大丈夫?今日は早くねなよ?』
 
優しい言葉。
期待通りの言葉。
 
だけど、昔ならニヤニヤしたであろう僕は次の文面を機械的に考えるだけ。彼女の喜びそうな言葉を。
 
「大丈夫。■■■が居るから頑張れる……気がする笑」
 
狂ってる。こんなの全然意味がない。だけど僕はまだ意味のある関係を知らない。
早く大人になりたいなんて思うけど、大人がソレを知っている保障なんてないんだ。
 
ぶーぶーぶー
 
『なら良かった笑 ……でもホントに大丈夫?最近あんまり元気ないみたいだけど……』
 
「そうだ。辛い。僕はもう君が好きじゃない。苦しい。離れたい。だからフッてくれ。最初から好きなんかじゃなかったんだ」
 
勢いのまま携帯に打ち込んですぐに消した。
保存しますか?
いいえ。
 
こうやって僕の心にはいろんなものが溜まっていく。