「わかった。乗せてくよ」


 金沢と押し問答をしていても時間が過ぎるだけなので、俺は諦めて金沢を車に乗せ、有希のマンションへと向かった。


 助手席に座る金沢も、ハンドルを握る俺も無言の内に車は有希のマンションの近くまで来た。ふと見ると、マンションの前に白いコートを着た黒髪の少女の姿があった。いつもの制服姿とはだいぶ感じは違うが、その少女が有希である事はすぐにわかった。


「あの子?」


「あ、ああ、そうらしい」


 金沢にはわざと気のないような返事をしたが、実際は有希に会える事が嬉しくて、俺の気持ちはかなり高ぶっていた。


 有希の顔がはっきり見えるほど車が近付くと、有希は俺を見た後すぐに助手席の金沢に視線を移し、驚いたような、あるいは困ったような顔をした。