拓馬に連れて来られたのは、大通りから少し外れた所にある美容室だった。

黒で統一された室内で観葉植物がたくさん飾られており、ヒーリング系の音楽が流れている。癒やしの空間、スパのようだった。

私たちの他にお客さんは数人ほど。慌ただしい様子はなく、ゆったりとした時間が流れている。


「いらっしゃい」


私たちを出迎えたのは、白シャツに黒いベストを着たハニーブロンドの男の人。

小顔でスタイルがよく、爽やかな笑顔が印象的だ。


「もしかして、拓馬の彼女?」

「違いますよ。兄貴の彼女です」


迷惑そうな顔をした拓馬が即座に否定する。

そこまであからさまに、煩わしそうな顔をしなくても……。


「なんだ、久しぶりに本気の子ができたのかと思った」


腕まくりをしながら、スタッフらしき男の人は淡々と言う。

会話の内容から、拓馬とはプライベートでも仲が良いことが窺い知れる。


「……そんなことはどうでもいいんで、(しょう)さん、こいつの髪とメイクを直してやってください」


仏頂面の拓馬は私の肩を押し、翔という男の人の前に立たせた。

髪とメイクを直す?

やっぱり、今のままじゃおかしいということか。

この姿では街を一緒には歩けないと?