「やあ、馨ちゃん!」
『………。』
あたしの目の前に立ちはだかるのは、朱雀の総長と思われるやつ。
つか、昨日初めて知ったけど朱雀の総長って唯兎なんだな。
こんな威厳の無さそうな奴が総長なんて…。
そろそろ朱雀も危ないんじゃねぇ?
『……何、朝から』
「うわ、テンション低いな」
『…おめぇ…、やっぱいーや』
「え!?言いかけて止めんのかよ!」
『何か用?』
「スルー!?」
あー、こいつうるせぇ。顔面に一発入れてやりてぇ…。
したら黙るか?
「あーあんさ?」
『………。』
「ちょっち、屋上来て欲しいんだけど」
『いや』
「そこは即答なんだ」
苦笑いする唯兎に、あたしは欠伸を溢した。
「まっ、強制なんだけどね!」
『は?』
ぐいっ、と腕を引っ張られ走らされる。
おいおい…、走る必要あるか?
つうかこれ、軽く拉致ってんじゃねーか。
春架たちが見たら、ボコられんだろうなあ…。
「着いた。…悪ぃな、無理矢理連れて来て」
『そう思ってんなら手ェ離せよ』
するとパッと手が放れる。
…なんだこいつ、意外に律儀だなオイ。
捕まれた手首を擦り、唯兎を見た。
……振りほどけなくもなかったが、面倒だからいいか。
『…で、屋上で何すんの?拷問?』
「まさか!仲良くしようと思って!」