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Side:
    .+*麻生 久遠*+.
    .+*Kuon asou*+.










「ん……久遠…………お願いジラさないで」


ぼくの下敷きになっているのは、取り巻きの女子の一人。

名前は……何だっけ?


覚えていないが、それはかまわないだろう。

なんたって、相手はぼくを求めているのではなくて、ぼくの体だけを求めているのだから。

もっとも、それはぼくも同じだが…………。





ぼくが動くたびに保健室のベッドが軋みをあげる。


昼夜ところかまわず、ぼくはこうやって女性を抱いている。


ガラリ。



保健室の扉が開いた。


足音は、真っ直ぐ躊躇(ためら)いもせずに一角にあるこのベッドへ向かってきている。


足音は大股だ。

きっと男だろう。




男の足取りは素早いもので、まるでここに人が居るのがわかっているかのようだ。


ぼくの下敷きになっている女性の体が強張ったのを感じた。



緊張感が漂う中――――――。



ザッっというカーテンを開く音と共に姿を見せたのは……。






睦(あつし)だった。