マンションに戻ると、パトカーが停まっていたり、野次馬が居たりで騒がしくなっていた。
人混みを掻き分け、なんとかエントランスに入ると、九条さんが若い男性と話をしていた。
男性がこちらに気付き、近寄って来て、スーツの内ポケットから取り出した手帳を呈示しながら口を開く。
「こんばんは。刑事課の宮間といいます」
「みやま……?」
小さく口の中で呟き、隣に居る所長さんを横目でちらりと見る。
偶然かな。
でも、何となく似てる……気がする。
つり目とか綺麗な黒髪とか。
「事件の詳しい事をお訊きしたいのですが……また明日伺いますね」
刑事さんは気にする様子もなく話を続けるから、偶然だと思うことにした。