「愛依、いい加減に帰ったらどうなの?」



「たまには良いでしょ?のんびりさせて」



お盆休みもとっくに終わり、もうすぐ9月。

3日間の連休の最終日。

私は連休を実家で過ごした。

携帯にも触れず、テレビや新聞もほとんど見ずに自室に籠もってた。

大学時代で止まったこの部屋は、今じゃ考えられない位にピンクや水色で纏められた部屋だけど、落ち着くのは落ち着く。

もちろん自宅は今の私に合った部屋だけど、ここは22年間を過ごした場所。

上げ膳据え膳だし、今の私には最適な場所。



「あんたさ、どうして応援してあげないの?斗志樹君、本庁に戻ったら大出世でしょ。地道に警視総監になったお父さんより、もっと凄い名誉な事じゃない」



「応援してないわけじゃない。何で、人から聞かなきゃいけないの」



「坂田は知らなかったから仕方ない」



「みんなして知ってて、おかしいよ」



お盆休みが開けた直後だったかな。

署長がいきなり刑事課を訪ねて来たのは。

そこで何も知らなかった私たちに向かって、「1年間しか一緒に働けないのに、良いチームワークが生まれてるようだね」と言ったんだ。

唖然とする私たちに、斗志樹は「まだ決まってません」と言うし、坂田署長は「君には良い話だろう」と言った。

詳しく聞けば、斗志樹は1年契約でここへ来て、私が課長として就ける体制を築きに来たようだ。

1年で無理だったら3ヶ月毎に更新し、ここでの任務を終えたら他の地方署の刑事課へと行く。

しばらくは本庁にすら帰らない、キツいけど出世コースを望むなら、受けるべきの仕事。