「――あの馬鹿!!」



ある日の夜、私は当直の子からの電話で、家を飛び出した。

ガザなどで、ただでさえ疲れてる斗志樹を叩き起こし、斗真を迎えに行って、平井菜々子さんの職場であるとある企業のオフィスに行くと、2人が取っ組み合いの喧嘩をしてた。

しかし、それでも七星は刑事であり、空手の有段者。

一方的に殴られてるだけ。

騒然とする、社員たちの山をかき分け、3人で近付こうも、平井さんの怒号は止まない。



「ガキじゃないんだから考えなさいよ!私の価値を下げるつもり?私はあんたなんか、最初から相手になんかしてないの!斗志樹に近付く為のエサってだけ!」



「だから俺は、もうエサだとかどうでも良いんだよ!けど、頼むから斗志樹君には会わずに居てくれって言いに来ただけ!2人の幸せを、邪魔して欲しくないんだ!」



「奥さん、あんたの従姉だもんね!傷付けたくないのはわかるけど、先に傷付いたのは私!斗志樹と結婚するのは私だった筈だもの。あの時、いきなり結婚を前提に交際を申し込んで、引かれたのはわかってる。けど!時間が解決すると思ってたのに……。あんたの従姉が――ッ!!」



「……もう終わりや。これ以上、私の従弟に手出しさせへん」



再び七星を殴ろうとした平井菜々子の手を、私は掴み、取り押さえた。