―斗真SIDE―



「おはようございます……」



「おはよう」



姉貴が不在の刑事課。

遅刻寸前でやって来た七星は、この1ヶ月で、元々細身ながらかなりやつれ、無精ひげまで生やして覇気がない。

七星をチラッと見て、また書類へと目を向けた兄貴。

朝は姉貴のデスクで仕事し、朝礼などをしてから課長室へ行く兄貴は、ここに来た頃のような無表情が増えたが、俺たちと接する時に変わりない。



「七星君、コーヒー」



「……そんなヤツに出す必要はない。朝礼を始める」



――だが、今日は違った。

目に怒りがちらつき、言葉に刺がある。



「はい……っ」



臼杵さんが、身体をビクつかせながらデスクに戻り、七星のマグカップを隠すように置く。

全員が立ち上がるのを確認した兄貴は、何事もなかったように、いつも通りに朝礼。

確かに感じた怒りは、俺の勘違いか。

それとも、堪え、気持ちを切り替えたのか。

--プルルル…ッ



「……はい、刑事課」



朝礼中、鳴り出した電話に出る。



『斗真君?朝礼中にごめんね。お昼休みでも良いから、ちょっとだけ付き添い頼める?』



「わかった。また後で電話する」



電話の相手は、嫁からだった。