薫の身体に生温かい何かが滴り落ちる。

「え………」

薫が力のない声でつぶやく。

「ったく、お前はいつも…最後の最後に油断するやつだな…」

かすれ声で奏雲が声を上げる。

化け物は力を使い切ったらしく、変形させていた鎌が煙となって消えていった。


直後、奏雲が地面に仰向けで倒れる。


二人は急いで身体を起こしたが、血は止まらぬ勢いで流れていた。

薫は必死に傷口を手で抑えた。


堪えきれず、涙が滴り落ちる。

溢れ出て止まらなかった。

死なせたくない。死んでほしくない。


「…ったくなんて面で泣いてんだ。」


奏雲が苦悶にのたうちながら薫を見ようとした。

「いっつも言ってだろ。オレの仕事は正義の味方だって。」

奏雲は笑みを浮かべてかぶりを振った。