ピピピ…ピピピ…

目覚ましがなる。


「おーい!薫ー!そろそろ時間だろー!早く準備しろよー。」

下の階から声が聞こえる。

親父……


ろくでもない親父。

俺が8才の時に母を死なせた。


仕事、仕事で家庭を顧みなかった。

親父がなんの仕事をしているのかは知らない。


いや、聞いても答えてくれない。

いつもはぐらかされて答えない。


本人曰く、正義の仕事らしいが母を死なせた親父を正義だとは思わない。

薫と呼ばれた青年は、ベッドからのそのそと起き上がり、若干シワでくちゃくちゃになったカッターシャツを着ながら下に下りていった。


「今日、帰りが遅くなりそうだから悪いが何か適当に晩飯はすませてくれ。」

薫の父親=奏雲がネクタイを締めながら話す。しかし、どこかぎこちない締め方だ。


「わかった。(遅くなるのはいつものことだろ)」

薫は少しイラつきながら心の中でつぶやいた。