【side夜兎】




パタパタと逃げるように走り去る小さな後ろ姿を見送って……



その姿が完全に見えなくなると妙にがっかりした。



「…どういうことか説明しろよ……。病気とか保健室とか…

しかも、あの子は誰だ?」



そんな俺をじとりと睨み付けるように、幼なじみの篠崎嵐(シノザキラン)が見ていた。



嵐はあまり人付き合いが好きじゃない俺の数少ない友達の一人。



「んー…?

…あぁ、俺……病気らしいよ。」



未だ彼女が走り去った方に目を向けたまま、嵐に答えた。



「頼むから…

それをわかるように説明してくれ……。」



嵐はがっくりと肩を落として顔を片手で覆った。



「……嵐、俺はおかしい。」



「…おまえはいつもおかしいよ。」



半目で言われたけど、無視した。



「あの子……にゃあが側にいるとドキドキして…苦しい。

……なんでだ?」



「………!!?」



そう言ってやっと嵐に視線を向ければ、たれ目をこれでもかって見開いて



ご丁寧に口まであけたマヌケ面で…あり得ないモノでも見るように俺を見て固まっていた。