「たーかーすーぎー、さんーんー」


「んだよ、だらしねぇなぁ」


「だってぇええ………。あと、どれくらいあるんですかぁ……」


ぜぇ、はぁ。

荒い息を繰り返しながら、私は前を行く高杉さんに問うた。


「あと少しだ。この坂を昇ってすぐ――……あぁ、もう。ったく、しょうがねぇ奴」


「え、あ」


高杉さんに手を引かれて。

私はよたっと、丘の上に着くことができた。


「―――……、ここ、……」


そして思わず絶句。
何故ならそこは、高杉さんと私が出会ったところだったからだ。

なぜわかったのかって?……それはもちろん、"全く一緒"だったからだ。

時刻はもう夕方。

城下町の反対側に沈みかけている夕日が見えて、私は目を細める。

そうだ、あの夕日に見とれて私は、こちらに来たんだ。

ううん、もしかしたら見とれた時はすでにこっちに来てたのかもしれない。


「わかるか。……お前が、突っ立ってたとこれだよ」


「突っ立ってたんじゃなくて、夕日に見とれてたんですよ……」


ふ、と高杉さんが笑った。


「あぁ、確かにお前、そう言ってたな。俺にはそんな、綺麗にゃあ見えねぇけどなぁ」


そう言って腕を組む高杉さん。
静かに、静かにため息をついていた。