なんて綺麗なんだろう…。


ふいに、そう思った私は足を止めた。
学校からの帰り道、辺りは夕焼け色に染まっていて、見回せば幾つかの木が真っ黒になって生えている。

夕焼けをバックに見ているからこうなったんだろう、けれどもその光景があまりにも幻想的で、ついつい足を止めて見いってしまったんだ。


「綺麗……」


そう呟き、眩しさゆえに目を細める。


「そうか?」


「はい。とても、とても綺麗です。こんな世界でも、まだまだ……って?」


「は?」


いきなり現れた人影に驚いて一歩後ずさる。
え、え、誰この人?

さっき辺りを見回した時は居なかったと思うんだけど、いつの間にこんな近くにいたのかな。

ってか、人の独り言にさも当たり前のように答えないでよ……!


「だ、誰ですか貴方」


キッと相手を睨み付けて、問う。
勿論、その間にもジリジリと後ずさりをしつつ。


けれども、相手はいとも簡単にその差を詰めて顔を近づけ、さも不思議そうに首を傾げた。


「知らん、だと?ここにいながら、この俺様をか?」


「し、知りませんよ!知るわけありません!だって私と貴方は会ったことなんて…」


「高杉晋作だ!」


……………は?