えーと…。


彩は青ざめながら、どうしてこんな状況に陥ったのか、必死で記憶を辿っていた。


とりあえず確かなことは、今は放課後で、場所は校舎裏ってことと。
彩を取り囲む数人の女子高生たちに好意を抱かれていないことだけ。


「あんたさぁ」


リーダー格の、黒髪で切れ長の目をした美人が口を開く。


その子には見覚えがあった。


そして徐々に、かつて同じことをされた記憶が鮮明になってくる。


「前に、もう啓吾に近付かないって約束したよね?」


やっぱり。
彩はそう思い、内心で溜め息を吐く。


入学してすぐの頃、彩は彼女に呼び出され半ば強引にそう約束させられていた。


上級生に目を付けられるのは嫌だったから、啓吾に関わらないようにしようと思ってはいた。

けれど。
同じ弓道部に入部していたし、隣りに住んでいて何かと接する機会が多いのに、そんなの無理だった。