「テニス部遅いぞー。
早く帰ろうぜ」

部活の後、散らばったテニスボールを拾っていると、既に制服に着替え終わったタケルがフェンスの向こうから声をかけてきた。

隣には秀平の姿。
久しぶりの部活はどうだったのかな。

二人に待っててもらい、私は慌てて更衣室に向かった。

「実果先輩の彼氏って、どっちなんですか?」

さっきの様子を見ていた後輩に、目を輝かせながら聞かれて私は苦笑い。

ムードメーカーのタケルと、対照的にクールな秀平。
二人とも背が高いし、人目を引くタイプだから、こんなふうに羨ましがられるのはいつものことだけど、その度どっちも違うとしか答えられない自分が少し情けない。

部活で汗だくになった体をパウダーシートで念入りに拭いて制服に着替えた後、ほんの少しだけメイクを直して二人の元に向かった。

「どうだった?
久しぶりの部活は」

帰りの電車の中で、私は座席に座りながら秀平に聞いた。

端から秀平、私、タケルの順に座るのが私たちの決まり。

「別に」

秀平はタケルが手にしてたマンガ雑誌を奪うと、それだけ言って読み始めてしまった。