結衣はもう寝てるだろうか……

 そう思いながらマンションのドアを開けると、リビングに明かりが点いていた。中に入ると、結衣はソファにもたれながら、眠っていた。


 俺は静かに結衣に近付くと、そのあどけない寝顔に見入った。
 結衣は、起きてる時はちょっと高慢ちきな感じで澄ましたような顔をしているが、寝顔は子供のようにあどけなかった。


 俺は、結衣のこの寝顔が好きだ。いや、起きてる時の結衣も……好きだ。


 なぜ今まで気付かなかったのだろう。そんな自分の気持ちに。


 いや、それは違うな。本当は気付いていて、それを認めようとしなかっただけなんだ。俺はたぶん、ローマでの初夜の時から、結衣を好きになっていたんだと思う。