今年の春。

家から近い位置にある、レベルもそれほど高くない普通の高校に入学することになった。

真新しい制服に身をつつみ、鏡の前で自分の姿を見る。

(ブレザー、可愛いかも)

上機嫌でリビングに向かえば、当たり前のように家のソファーに座ってテレビを見ている可愛い幼馴染がいた。

「おはよ、心。」

「あ、おはよう...って、なんで理来がいるの!」

「今日入学式だろ?一緒に行こうぜ。」

「え、あ、うん。」

そう、彼と私は同じ高校に入学することになっていた。

たぶん、理来も私と同じ理由で桜城高校を選んだのだろうと思う。

「お母さん寂しいわ、今日から心と理来ちゃんは家にいないんですもの。」

お母さんが寂しそうに呟く。

理来は 理来ちゃん と言われた事に反論していた。


「大丈夫だよ、夏休みとか冬休みには帰ってくるし。」

「でも寂しいわ。...2人とも、気を付けてね。」

「うん。」「わかってる。」

返事をすればお母さんは笑った。

もう一度いうが、今日は入学式。

そして、寮生活が始まる。

桜城高校は全寮制で、入学式の日から卒業まで寮に住まなければいけないのだ。

不安もあったが、楽しみでしょうがなかった。

初めて家から離れて生活するのだ。

門限は決まっているものの、ある程度自由にできる。


「心、顔キモい。」

ニヤけていると理来に指摘されて慌てて表情をもとに戻した。

時計に視線をうつすと、もうそろそろ家をでたほうがよさそう。

「お母さん行ってきます。」

「いってきまーす。」

「いってらっしゃい。」

リビングをでるときにわざと理来の足を踏んでやった。