船の中ではそんなqとのやりとりが幾度もくりかえされた。

qは俺の摩羅を執拗に求めたが、俺が完全に拒絶するので
そのうちあきらめた。

俺の腕や身体、手指にさわってくる。
はじめはこれも拒絶していたが、そのうちにめんどくさくなり、
奴のやりたいようにさせた。

qは、愛情にひどく飢えているようだった。
乳飲み子が、母親を求めるがごとく、
身体のふれあいを求めていた。

「サダクローはどうして魔法が使えるの?」

「これは魔法じゃないよ。ただのまやかしだよ。」

「それにしたって、普通じゃできないよ。
どこかで習ったの?それとも、もともと使えたの?」

「言いたくないね。」

俺は、今の自分自身が心底きらいだった。
顔つきも、言葉遣いも、思考も、そして暴力。
山にいたころの自分が、今の自分を見たら、どう思う?

qは俺の手の中指を口に含んでいた。
舌が吸い付いてくる。
あの女の身体の中を思い出した。

しばらく指をqにあづけていると、またqが摩羅に手をのばしてきた。
そして、俺はqを殴る。

「サダクロー、硬くなってるじゃないか」

俺は無言で奴を殴る。
すると奴は泣く。

とにかく、このqという奴は俺の情動を揺さぶる。
奴が泣きわめくと、俺は感情をコントロールできなくなり、
その発露はいつでも暴力だった。

俺は山にいたころ、暴力はもちろんのこと、
声を荒げるようなこともいっさい無かったのだ。

あの頃はある意味ラクだった。
いつでも気持ちが安定していた。
qのように俺をゆさぶってくる人間はいなかった。


長い船旅で、野郎しかいない中、qを抱きたいという男は多かった。
穴だったら、なんでもいいんだろう。

たまにqは応じた。売りをやっていたようだ。

そんな時、俺は自分の心の中に、
わずかながら嫉妬心が起こるのに気づいた。
それに嫌悪した。

qはわざと俺の嫉妬心をかきたてるような言動をした。
それとわかっていながら俺はqを殴った。

泥沼だ。

qといるのがつらすぎる。
船が着いたら逃げ出そう。