「夕べはドタバダやってたねえ。あれ、弟さんだろ?」

トラットリアのおばさんに言われた。

qが俺の弟だって?

「そっくりだねえ」

待てよ、人種が違うだろうが。
俺はヤマト民族。qはケルト人だ。
だが、兄弟と思われてるなら、そのほうが都合がいい。

だけど、このおばさん、少し歳はいってるものの、
何をもってして俺とqが似てるなんていうのか?

俺の部屋の階下のトラットリアは初老の夫婦が営んでいた。
俺は毎日そこで飯を食っていた。

「サダクローは最近売れっ子だねえ。わたしらもいっぺん
幽体離脱ってやつを見に行きたいんだけど、店があってね」

「はは。あんなもんは、おばさんたちが見るに
値しないよ。くだらない、子供だましでね。」

そこへqが来た。

qはだまってテーブルの上の料理を食べ始めた。

「お前、おばさんにあいさつしろよ」

おばさんはよく来たねえ、と愛想をふりまいたが、qはぽかんと見ているだけ。

「ごめんよ。こいつ、あいさつもできないんだよ」