Ⅶ 悪夢
その数時間後、泥のように疲れ果ててベッドに倒れ込んだ玲子は、
眠りと共に忍び込んできた悪夢に囚われ、うなされた。
「それじゃ、玲子、元気で」
夢は、誠が軽く手を振って、リーシュコードに、玲子と過ごした湘南の海に背を向け、
家族の待つ故郷へと一人去って行く所から始まる。
その歩みには欠片ほどの迷いもなく、
潮焼けした笑顔は決して玲子を振り返ることもない。
いつも見上げていたサーフワックスの匂いがする背中は、見る見る小さくなっていく。
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