Ⅸ 初恋の結末



 ……ごめんね、栄治。 



 リーシュコードのカウンターの内側で、20歳になった栄治に背を向けたまま、

玲子は、数年前の残酷なほど愚かだった自分を振り返る。



「……先輩、俺、謝ったら怒るからね」



 だけど相変わらずカンのいい栄治は、

玲子の後ろ姿から詫びの言葉を読み取ったのか、穏やかにそう言った。



 先輩、俺を無職の宿無しにするわけ?!



 そのとき、誠と初めての夜を過ごした翌日、

栄治に結婚の報告をした瞬間に吐き捨てられた叫びが、胸の内側で響き渡る。



 おめでとうって言ってくれないの? 



 誠に肩を抱かれたまま、玲子は呆然とそう言った。