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暗い部屋に、和樹は横たわっていた。

思えば、自分の中での絶対的存在が、
彼でなくなったのはいつからだろうか。

「幹久(みきひさ)様…」

主人の名前を呟く、幼い頃、雨に濡れ、捨て犬同然だった自分を救ってくれた、ただ1人の恩人。

その人が変わってしまったのは、いつからだったか。

それはその人の両親が、初めて弟を後継ぎにすると言った時から。

主人は努力する人間だった。
誰にも負けない能力は持たないが、立派な後継ぎになろうと、努力していた矢先に、その言葉。

主人の弟は、天才だった。

何にでも、人並み以上の力を持ち、人の心を見抜く人物だった。

彼はあっさりと、後継ぎの話を断り、別に要らないとでもいうように、兄にその権利を突き返した。

ズタズタにされたプライドは、主人の性格を変えた。

前のように従うことが、苦痛となり、生まれて初めて自由を求めた。

そして、彼女に出会った。