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『愛してる。』

テレビの中で、抱き合う男女。
さくらは、紀一にチャンネルの変え方を教えられてからは、よく退屈な時間をテレビで過ごすようになっていた。

今日は、テレビをつけたときに入っていたドラマをそのまま見ている。

テレビの中で男は女に愛を告げて、女はそれに泣きながら応えた。

そして、二人は抱き合ったまま口付けを交わした。

「…///」

熱い二人にさくらは思わずチャンネルを変える。

「…くくっ。」

小さな笑い声がした。
紀一だ。

「なっ、なんですかっ。」

「いや…なかなか初々しくていいんじゃないか?」

「初々しい?」

さくらが首を傾げると、

「また今度教えてやる。今は内緒だ。」

紀一がまた笑った。

近頃の紀一はよく笑う。
夜に暴れる時間も、近頃ではだいぶ短くなってきた。
それは、紀一の病気がよくなってきているのか、今はたまたまそうなっているだけなのかは、さくらにはわからない。
だからさくらはこれまでと同じように、暴れた後の紀一に静かに寄り添う。

「紀一さんは…」

「ん?」

「紀一さんもさっきのドラマみたいなことしたことあるの?」

さくらの、純粋な(?)質問に、紀一の動作が一瞬止まる。

「…まぁ…あるよ…。」

もっと凄いことまで…
とは思ったけれど口には出さなかった。