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「さくら。」

今日何度目になるかわからない。自ら呟いた。

『さくら』という名前を男に貰った。自分が持つ数少ない記憶の中に、それは確かに存在していた。

それは、ピンク色の可愛いらしい花が咲く木の名前。

人に高く売る為だけに、最低限のことだけを教えられて、お前は見た目が良いからと幼い頃から外見だけを整えられてきた。
それでも、そこしか知らなかった幼い自分にとって家であり、世界の全てであったあの施設で。
自分は、確かに満開に咲き誇ったその花を見たことがある。

次々に売られていく、仲間の少女たちの涙と、その花の美しさだけは、自分の頭に鮮明に焼き付いていた。


「さくらだって。」

また、呟く。
自然と微笑みが生まれる。

さくらだ。
私の名前は、さくら。


私にも、やっと名前がつけられた。