ガラッ


「李玖、おはようっ!」


一斉に教室のドアに向けられる視線。


……シーン


本来、返されるはずであろう言葉がない。



『毎日、ほんと頑張るよねー』

『よく毎回、飽きないよね』

『佐野さんて、ある意味、無敵だよね』



そんなみんなの笑い声とともに聞こえてくる言葉は全て無視して、


「もー… 李玖ってば…」


そう言いながら、あたし、佐野杏樹(サノ アンジュ)は
李玖こと、葉山李玖(ハヤマ リク)の席に近づく。


「李玖! おはよう」


満面の笑みで言ったあたしに、


「…はよ」


面倒臭さ全開で返してきた李玖。



面倒臭さがってはいるけど、返事をしてくれる李玖があたしは大好きだった。