忘れてたっていうか、聞く暇がなかったというか……何にせよ、失敗だ。


 普通、有り得るか?付き合い始めた彼女の連絡先を知らないで別れるなんて……

 有り得ねーっての。


 マジでどうしよ。これじゃあ、もしかしてもう会えないんじゃ……


 ウソだろ……?

 ちょっと待てよ。何、付き合い始めて五分ちょいで自然消滅?短すぎだろ。いや、長さの問題じゃなくて……


 これって、結構危機的な問題なんじゃ……


 どうしよ……


 とりあえず、そろそろ終了時間になるから、俺はベッドから下りて服を着ようとした。


 ふと電話台の方に目をやると、彼女が置いて行ったお金に目が行った。


 二万円も置いて行っている。俺も出すから、こんなにいらないのに……


 ていうか、ナツもこういうのはしっかりしてるのに、連絡先のこととかは全然頭になかったのかな……


 やっぱり、付き合ってくれるのは、しょうがなく、なのかな……


 俺は、ため息をついて、下を向いた。すると、そこにあるものを見つけた。


 それは、白い携帯電話だった。


 これってもしかして……ナツのケータイ?


 お金出す時に落として、気づかずに行っちゃったとか?


 俺は、とりあえずそのケータイを開いてみて、このケータイの個人ナンバーを出してみた。


『柏原奈津美』


 その名前が表示される。

 やっぱり、ナツのケータイだ。


 ていうか……名字柏原っていうのか。名前も漢字で書くとこういう字なのか……。


 うん。結構イメージぴったりかも。

 あ、登録しとこ♪


 俺は赤外線で(勝手に)ナツの番号とメアドを俺のケータイに送って、ナツのケータイにも(勝手に)俺の番号とメアドを登録しておいた。



 ……て、登録したところで結局は連絡の取りようないじゃん。


 ホテルを出て、とりあえず家に帰りながら、俺は今更なことに気付いた。

 いや、でもナツだってケータイなかったら困るだろうし、俺が持ってたらまだ会える可能性はあるだろ。