「では、行ってきますね」


今日は山南さんが江戸に隊士を募りに
出発する日。



「ああ、気をつけてな、山南さん」

「よろしくお願いします。」



旅支度を終え、草履に履き替える山南さんに声をかける土方さんと、私。



「はい。紫水さんも、気をつけて。
 じゃあ、土方君。
 後は頼みましたよ」


「ああ。」



微笑んで山南さんはお供の人を連れて
出発した。




「紫水ちゃん。
 巡察の時間だけど
 準備できた??」


柱の陰から、沖田さんが見計らったかのようにひょっこりと顔を出した。


「あ、沖田さん。
 今行きます。」





門の所にはすでに、隊士さんたちが集まっていた

その中に齋藤さんもいた。
今日は三番隊と一緒に巡察だ。


「みな揃ったか。では、行くぞ。」



昼間の巡察は、町に着いた後、二、三人で一組になって回る。


今日は、沖田さんと斎藤さんと一緒だ。



…隊長二人が一緒って良いのか?


まぁ、さぼり癖のある沖田さんの見張りのために斎藤さんがいるんだろうけど。




「それにしても、一君。
 京の町は平和そうだねえ~。

 紫水ちゃんと一緒に巡察に回るようになってから
 全然浪士たちと会わないんだよねぇ~」


ちょっとつまんないなぁとぼやく沖田さん。


どうやらこの人には戦闘狂の気があるようだ。


さぼり癖あるくせして、刀振り回したがるんだよなぁ…
沖田さんはよくわからん。





「………今日はそうともいかないようだ」




そういって立ち止まった斎藤さんの目線の先は路地裏。



そこには、先ほど別れた他の隊士たちと何人かの浪士が向かい合っていた。