彼がくれた初めての贈り物はオルゴール。

白いうさぎが帽子を被ってちょっとすまし顔、手にはレースの日傘を持って、首を傾げてご挨拶。

ロングドレスのシフォン生地、まるでフランス生まれのお人形のよう。

風になびいたドレス、白いうさぎは穏やかな顔をして、まるでワルツを踊っているようだ。

パートナーはだぁれ?



会社から帰った私は、扉を静かに閉めて、まず手にしたのは懐かいオルゴール。

座って眺めてみる。

ゆっくりとしっかりとネジを巻く指は魔法のようだ。

何度も巻かれるネジと時を動かすしなやかな指、終わりは必ずやって来るのに、最後の最後までネジを巻く指は止まらない。

この白いうさぎは私と一緒だ。

ネジを巻き終えて一息、彼が好きだと言ってくれた指がふっと眼にとまった。

瞬きを一つ、瞼を閉じて考える、彼のこと。もう一度会いたい彼のこと。

私は体を目の前のテーブルに預けると、オルゴールを横から覗いた。

黒い長い髪、眉の上で真っ直ぐに切りそろえられた前髪がサラッと揺れた。

オルゴールのその向こうには大きな鏡がある。

赤い眼が暗闇に四つ、流れる曲は見つめるオルゴールからじゃなくて色の無いその唇から。