ケータイ小説 野いちご

幻想詩 1〜

タイトル未編集



風強く
木の葉大きく揺れれども
淡いコスモス近づけば
暖かく感じた三重の夕刻


解説です。

リハビリルームへ向かう途中の廊下の窓から、ピンク色の花の群れが見えました。

リハビリ士に訊くと、コスモスという花だそうです。

コスモスという名前は知ってましたが、花は初めて見ました。

窓の向こうのコスモスたちに直接逢いたくなりました。

車椅子を漕ぐ訓練のついでに、間近でコスモスを眺めたいのですが…。
そのようにリハビリ士に提案したところ、承知してくれました。

屋外に出るのは久しく、どことなく秋の暮れを予感させるような肌触りの空気でした。

クリーム色の建物が物悲しく染まっているのは気のせいでしょうか。

コスモスたちのそばに寄りました。
花びらがゆっくりと回転していて、妖精さんが花から花へと跳び渡っているかのようです。

妖精さん、ジャンプしてみてはくれませんか?
すると、コスモスの花はわずかに揺れました。

以前は、コスモスは少ししか咲いてなかったそうです。
毎年毎年種を自然と落としてゆくうちに、無数のコスモス群となったそうです。

コスモスの香りを匂いたいと思いましたが、あいにく車椅子から身を乗り出すことが出来ません。

すると、妖精さんが団扇で扇ぐようにパタパタしてくれたようで、コスモスのエッセンスが鼻をくすぐる感触がしました。

いつの間に登場したのでしょう。
一輪の背の高いコスモスが、こっちにオイデオイデしています。
添い寄って、鼻をあてると、その香りに花たちの夢想するロマンティックな世界を垣間見えました。
太陽や星とキッスが出来るようにもっと背を伸ばしたいことなど。

青空高くを純白の雲がゆったりと流れ、太陽光が雲の輪郭を金色に輝かせていました。

屋内に戻るには、坂道をのぼる必要があります。
次第に冷たい風が丘にくる。
漕いで漕いで漕いで漕いで、ドアの中へと戻れました。

コスモスは美しく、そして可愛かったです。

今でも胸の内でコスモスが、ぽっと花開いているようで、なんだか暖かく感じるのです。



終わり

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