ケータイ小説 野いちご

眠れないほど好き【短編】

軟派な上司

わたしは内心でため息をついた。

とたん、空いた茜の席にだれかが座りこんだ。


「市羽有紀さん、きみって固いって云われない?」


フルネームで呼びながらなんの前置きもなく、不躾に訊ねたのは唐沢だった。


「……そう見られるみたいですね」


わたしは他人事のように答えた。


固く見られるということは、茜に云わせればお得らしい。

いいかげんに扱われる確率が減るという訳だ。

わたしからすれば近づきにくくて避けられている感がある。

けっして固くはなく、逆にだれかといたくて、いいように流されるタイプなんだけれど。


「みたいってことはそうじゃないってこと?」

「固いつもりはないんですけど」

「へぇ」


意味ありげな相づちだ。


「……なんでしょう?」

「いや」


短い返事と一緒に何か含んだような笑みが返ってきた。


わたしはこの唐沢のイメージを間違って捉えていたんだろうか。

いまの口調は砕けすぎている気がした。

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