ケータイ小説 野いちご

眠れないほど好き【短編】

さみしい

「有紀、飲んでる?」


右隣に座った今日の主役、茜がビール瓶を差しだした。


「適当に飲んでるよ。それよりわたしはさみしいんだよ?」

「さみしいって?」

「茜はさきに結婚しちゃうからわかんないだろうけど、なんだか友だち盗られちゃう感じ」


茜はぷっと吹きだした。


「有紀、ありがと。そう云ってもらえるような友だちがいてうれしいよ。そのわりに秘密を打ち明けてくれないって矛盾してるよね?」


確かになんでもかんでも喋っているわけではないけれど、茜が云う『秘密』に心当たりはなく、わたしは眉をひそめた。


「……なんのこと?」


「んもう、そこまで秘密にしなくってもいいのに。どうせわたしは今日でやめちゃうんだから。まあ、いいわ。東京で吉報を待ってるから。じゃ、挨拶まわりやってくるね」


わたしが考えこんでいる間に一方的に云い残し、茜はわたしの左隣にいる経理課長の横に移動した。


業平は結婚退職を勧めているわけではなく、むしろ引き止められる。

茜の場合は、ご主人になる人が結婚と同時に転勤になるらしく、というよりは転勤を機に結婚を決めたみたいで、転勤族という以上、引き止めるには無理がある。

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