あれ程、新鮮だった東京での生活にもなれ、
時々、ネイルやエステ、渋谷にも通ってみたものの・・・、
つくづく感じるのは、「お金が足りない。」との一言に尽きる。
そして退屈、マンネリ化。
そのうえ、ただでさえ少ない給料を度々、親父がせびってくる。
島での漁師生活の困窮ぶりを 切々と手紙に書いて送り付けてきやがるのである。
父とは、もう10年近くも会ってはいなかったが・・、
今では随分と年老いたであろう、父の顔を思い出せないし
思い出したくもないと云う気持ちの方が強かった。
それに最近では、憎しみさえも湧いて出て、父ではなく、親父と呼んでしまっている。
「縁を切れたらどんなに楽だろう」と思いつつも、ついお金を送ってしまう夏帆であった。