「く……う……っ」

 キアーロの激痛の訴えは、既に言葉にはならなかった。

 見た目は、女のように細くとも。

 実は良く鍛えあげられたキアーロの腕は、後ろ手で、刺のついた鎖でしばりあげられた上。

 目に見えぬ神に頭を垂れるように、無理にひざまづかされていたからだった。

 他にも。

 キアーロは、半裸のカラダに食い込むほどにキツく。

 やはり刺のついた太い鎖を、幾重にも巻きつけられていた。

 白い、大理石のように、なめらかだった彼の肌は。

 鎖につけられた無数の刺に無残に引き裂かれ。

 石作りの、冷たい床を、自らの血で汚し。

 ほとんど身動きが取れない姿のまま、長い間ずっと放置されていた。


 ……闇に沈む地下牢の一室。

 これが今の、キアーロの世界の全てだったし。

 暗闇の中に、たった一人だったから。

 彼がどんなに苦痛を訴えても、誰も聞く者はいなかった。

 それは、間違いなくキアーロを孤独に追いやり、心身共にじわじわと壊して行ったけれども。

 彼にとって、まだ最悪な状態ではない、と言えた。


 ……なぜなら。