ただ球が空にぽかんと浮かんだまま、蒼の声はしない。


「球の中でじっくりと覚醒してもらって、私の可愛い奴隷になって出てきてもらうわ」


王女の、地を割くような甲高い笑い声が、アレオン中に響き渡った。


絶望感に涙も枯れて、ただしゃがみこむ美津子。

呆然と、浮かぶ球を眺める千鶴。



「リョウも新しい王になる準備をしなければね。ふふふ」

「……母さん……」


王女の伸ばした手がリョウの髪に触れようとしたとき、黒い球に少し小さな亀裂が入った。

ミシッミシッという音とともにその亀裂は大きくなる。