何かしたのかと問われれば、これはもう間違いなく『何もしていない』。

ただ慎ましやかに、ひっそりと生活を送っている。

少なくとも本人はそのつもりだ。

なのに璃宮 シーザは襲われる。

幼少の頃からそうだった。

記憶があるのは幼稚園の年長の頃。

近所で飼っていた犬が、首輪を外して脱走していた。

幼かったシーザから見れば、かなり大きなメスのセントバーナード犬。

彼女はヨタヨタと道路を歩いていたが、シーザを見るなり目の色を変え、涎を垂らしながら突進。

突然背後から覆いかぶさってきて、シーザは危うくアレな目に遭わされる所だった。

その当時はシーザにそういった知識がなかったので何をされようとしたのかは分からなかったが、本能的に『ヤバイ』と感じたのは覚えている。