「…何だ、エラくおかしな感じだっ…、」
 引き止めたモノが「少女」であると思い込んでいた憲治は、振り返って絶句した。
「…っ!」
 やせた体にほっそりした頬、少し日に焼けた感じの肌をした、小柄な少女がそこにいた。
「…せ、先輩!お久しぶりです…!」
 上下関係の厳しい吹奏楽部らしく、少女は、ちょこん、と一礼した。左右に分けたお下げ髪が揺れる。顔を上げた少女のくりくりした大きな瞳が、眼鏡の奥で潤む。