その日は晴天と言う言葉が相応しく空は雲ひとつ無く真っ青に晴れていた。

吸い込んだ空気は塩の香りが染み付き、すぐ側で大型船がけたたましく汽笛を鳴らした。

カモメ達が自分の腹を満たすために観光客に群がっているこの場所は某県の船着場である。

季節は三月で海風は十分に寒さを感じた。

私はパーカーのチャックをキツく締めて自分の手に息を吐きかけた。

それでも日差しはキラキラと海を宝石かゼリーかと言うように演出していた。

私は首から下げているカメラを構えて港を写し腕ならしをする事にした。


私は今から日帰りツアーで戦争の爪痕をそのまま遺している特殊な島に渡るのだ。

勿論これは趣味であって、仕事などではない。とても個人的な物だ。

そしてこんな趣味に共感してくれる人など極、稀で初めは一人で渡るはずだった。

しかし、疑い深い事実でそんな私の趣味に同行したいと言う人間がいた。

その人は何というか小学校の時のクラスメートで6年の途中で転校してしまった人物だった。